パリの住民は、一人ひとりが自分の好みのビストロをもっていて、そのビストロはおかしなことに、その人の住んでいる場所に必ずしも近いところにあるとはかぎらない。それでいて、道のはずれとか、またとんでもない見当ちがいなところにその人の好きなビストロがあって、時間になると狭い通路に人を吸いこみ、またそこからはきだしていく仕事場とか事務所、バス停、あるいは地下鉄の駅からほんの一、二歩のところにそのビストロがあるということも考えられます。
つまり、どっちのビストロにいこうかなんて考え方は、パリの市民には必要ないことであって、外へでてどっかへいって酒を飲むとか、一杯ひっかけるとなると必ずここにしかいかない、それがビストロだといえます。(本書「序」より)
辻調グループの創設者である辻静雄のビストロレビュー。まるでしゃべるように書かかれた独特な文章で、各店の料理をつぶさに観察していることが伝わってきます。装幀は佐野繁次郎。
|著者|辻静雄
|装幀|佐野繁次郎
|出版|柴田書店
|出版年|昭和51年5刷
|サイズ|190mm×132mm
|状態|表紙カバー上部に細かな折れ、全体に経年による劣化がありますが、状態は概ね良好です。